僕は、酒も少々嗜むが、甘いものにも目がない。今回、撮影した和菓子は全て食した。カメラを通してたくさんの和菓子と向かい合う中で、日本人ならではの繊細さと艶やかな世界に魅了されていった。日本の連綿たる時間と文化の輝きを小さな世界に塗り込める職人の仕事に敬意を払いたい。この撮影は、和菓子のなかに秘められた本質的な価値、もてなす心の巧みさとの闘いでもあり、まるで精神修行のようだった。
( 平凡社 別冊太陽 「和菓子風土記」 撮影後記より / 棚井文雄)
日常の喧騒を離れ、ゆっくり和菓子に向かうとき、私たち日本人はつくづく季節に敏感な繊細な感性を持つ民族なのだと思う。儀式菓子から駄菓子まで、その種類は多彩だが、いずれにおいてもその小さな世界に、四季折々の美しい自然を取り込み、手作りならではの優しさを映し出している。菓子そのものの意匠のみならず、名付け、包みのかたち、器のみたてにいたるまで、絶妙の技とセンスを響き合わせています。”人は、菓子のみにて涵養するにあらず、されど菓子なくして魂を養うことあたわじ”.....極め尽くす美しさ愉しさに、心を開いて和菓子を愛でるとき、その根底に流れている、和みともてなしの心、日本人のモノへの思いがあざやかに見えてきます。
( リブロ 「JAPAN 2011」 より )